かん子の連載

2014年ノーベル生理学・医学賞

毎年、10月はじめに発表されるノーベル賞。
今年もその季節を迎えました。
10月6日に発表された、ノーベル生理学・医学賞は、

「空間のどの位置にいるのかを脳の中で認識する神経細胞の発見」

をした、ロンドン大学のジョン・オキーフ教授(74歳)とノルウェー科学技術大学のメイブリット・モーザー教授(51歳)と夫のエドバルド・モーザー教授(52歳)の3名に授与されました。

”私はいま、自分の部屋のイスに座っている”

このように、自分がある空間のどこにいるのかを把握していないと、次の行動はできません。
オキーフ教授らが発見した、この細胞が働くことで、人間やラットは空間把握ができ、次の行動ができる、と考えられるのです。

アルツハイマー病などでは、脳のこの機能が失われるために道に迷ったり、自分がいる場所が分からなくなったりする、といいます。

オキーフ教授ら3名の業績は、私たちが空間のどこにいるのか把握するしくみを、細胞レベルで解き明かした重要な発見です。

オキーフ教授は1971年(当時オキーフ教授は32歳)ラットの脳に電極を取り付け、部屋の決まった場所にくると脳の海馬に存在する、決まった細胞が活性化することを発見しました。
これは後に「場所細胞(place cells)」と呼ばれるようになり、この分野の先駆者となりました。

海馬は記憶に関わる脳の領域です。
場所細胞はいまいる場所を知るだけでなく、過去にいた場所を知ることも示しているのです。
つまり記憶の研究にも、場所細胞の発見は貢献したのです。

しかし、どうして場所細胞は特定の場所にきたときだけ、反応するのでしょうか。
エドバルト・モーザー博士、メイブリット・モーザー博士夫妻はそれを解き明かしました。
2005年に、モーザー夫妻は海馬に情報を伝える脳領域に注目し、そこで格子細胞(グリッド細胞)を発見します。
6角形の格子状に存在するグリッド細胞が働くことで、位置の方向付けを行い、海馬にある場所細胞にその情報が伝わる、というしくみです。
グリッド細胞は、たとえば出発点や最後に曲がったところから、いまどのくらい離れているかといったことを記憶するのに役立っているとみられています。

ノーベル財団がこの発見を”脳の中のGPS”と、とらえていたので、なるほど、と思いました(GPSはカーナビに使われているシステムです)。

受賞者の研究はラットですが、最近は人間にも似たしくみがあることがわかっているそうです。

さて、つぎは物理学賞。
物性の研究あるいは、コンピュータや通信関連の研究が注目されます。