かん子の連載

私の恩師シリーズ1 神宮輝夫氏

恩師、というのは、教えを受けた人のことである。

もちろん神宮輝夫氏は、アーサー・ランサムを訳してくれた人なので、その点だけでも足を向けては寝られない人ではあるが、まだ学生のときにたまたまお目にかかったら、いきなりこうおっしゃったのだ。
「原稿用紙は200字詰めを使いなさい!」
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私はその時、書き手になりたいんです、といった覚えはないのですが(いったのかもしれないが)なんでその話になったのか、記憶にない。
驚愕のあまり、忘れてしまったのかもしれない。
なぜですか?
とおききしたところ
「300字くらい書いたところで書き間違えるとイライラするから」
と(まだワープロもないときの話です。原稿用紙、使ってました)おっしゃいました。
なるほど、と思った私はそれ以来、パソコンになるまでは200字づめで通しました。

次に
「売るつもりのない原稿は書かないように」
とーー。
これも、まだその頃は一文字も書いてなく、売るもへったくれもなかったのですが、その教えも忠実に守り、それ以降、売らない原稿は、ほぼ書いたことはありません。
もちろん神宮先生は、一学生にそんなこといったなんて覚えていらっしゃらないでしょう。
でも、いわれたほうは忠実に守り、この二つの教えのお陰でそのあとかなり助かりました。
特に二番目の、売るつもりのないものは書くな、は初めから売るつもりで書け、ということですから、一番目は自力でたどり着けたとしても、二番目を、自分で見つけられたかは難しい、と思います。
というわけで、神宮先生を私はずっと自分の恩師だと思っているのです。