かん子の連載

19990年代は

19990年代は活版印刷からデジタル印刷に変わり、いままでできなかったことができるようになり、欧米の絵本界が有頂天になった時代です。
たとえば、それまでは色セロファンをくしゃくしゃ、と丸めて貼りつけたようなものは印刷で再現できなかった……。
でもデジタルならできるのです。
次から次へ、こんなんはどうだろう?という実験的な手法が試され、どっちを向いても当時はコラージュだらけでした。
最終的にはアクリル版に絵の具を流す……というやりかたまで飛び出し、だいたい何ができて何ができないかわかったところでみんなの熱が収まった……と思ったのが2004年くらいです。
で、そのあとは絵は素晴らしくいい!
ホントに、いい!
でもお話は、えっ?
というか、愕然とするほどなにこれ?
になっていって、どんなにいいと思っても最後の一枚を読むまでは油断できないぜ、というようになっていきました。
日本でも「給食番長」「こびとづかん」のヒットからあと、2010年あたりからそれが始まったんです。
絵はうまい!
魅力的!
でもお話は、はぁ?
みたいな……。

どの会社もいまは新人発掘していてそれはいいのですが、油断できない……。
最近の絵本のあらかたをいまチェックできていないので(時間がないの!)もしかしたら、いいのがごろごろしているのかも、と思うのですが、見たなかのものは、うーん……、と唸るようなものばかりで、なんというか、下手じゃない、でもどっか変、なんかおかしい、微妙に推薦できない……のです。
で、ホントにいいものが売れるか、というと、これまた微妙……。
たとえば「ロンと海からきた漁師」は最高級品ですが、あれがウケるか、というと、難しい……。
読み手も受け手も、なんというか人間になってないと、あの本の良さはわからないですから……。

ひとことでいえば“オタク”なんだけど、よく言えば洗練されてきてるんだよね。
昔みたいな、真正オタクはもういない……。
まあ、日本は平安時代からそうだったんじゃない?といわれればそうなんだけど、この取り込みかたって日本だよねぇ、です。
取り込んで磨きあげていくやりかたが繊細……。
ヨーロッパはそれに比べればまっとうにオタクなんで分かりやすいんですが……。

なんでそろそろ大量の絵本チェックが必要だなぁ、と思います。
絵本は新しい時代に入りました。
そうしてどっかに新しくて優秀な本があるかもしれないのですから。