かん子の連載

学校司書も棋士と同じに“三月のライオン”である。

学校司書も棋士と同じに“三月のライオン”である。
昇級(もしくは降級)がかかっている将棋のプロは三月は殺気だつらしいが、学校司書もたいていは一年契約なので、4月にまた雇われるかどうかわからない。
民間委託の会社が請け負っている場合、会社そのものが変わる可能性もあるので、そうなると全員クビである。
東京近郊は慢性の人手不足なので、一つの市でクビになっても回りを探せば仕事は結構見つかる。
みんな、遠距離通勤には馴れているので一時間くらい離れていても平気で通うしね。

なので三月はあちこちの試験を受け続けることになる人もでてくるわけだ。

このやりかたは、使えない人にやめていただくにはいい制度だが、どうしても給料のいいほうに人は流れるので、いてほしい人もいなくなるという欠点もある。
それになによりも、毎年、年度勝負をさせられると、学校図書館は長期計画はたてられない。

なので、いま学校司書の勝ち組は、きちんとしたお金を払っている自治体だ。

そういうところでは競争が凄いので、いい人が採用できる。
そうしてやめない。
楽しく一生懸命働く。
まわりのレベルも高いのでぐんぐん仕事ができるようになる。

一年しかいられないんだ!
と思うと、廃棄は素早くなる。迷ってたら図書館ができあがないうちに去ることになるから。
一人で二校も三校も持たせられると、仕事ができない人はついていけなくなってやめていく。
残るのは素早く考え、自分で動ける人だ。
いろいろな学校にいくと、一つのやりかたでは通用しないということもわかる。
それぞれの学校によってやり方も違えば先生方の対応も違うので、それに対応しなければならないのだ。
同じ一年で、物凄く保守的なところ(一冊も捨てないでください!)とお任せのところ(好きなだけ捨てちゃって!)を受け持ったりするのだから。

かくしてこの五年のあいだに育つ人は本当に育った……。
育ってない自治体は、たとえば月に三万円しか払いません、というようなところだ。
予算は失業手当なので半年ごとにクビにします、というところだ。
雇うだけで研修もなく、あとはほったらかし、というところだ。

本当に、安物買いの銭失いだな、と思うよ。

かくして、三月の学校司書の心のなかでは、嵐が吹き荒れるのである。