かん子の連載

【赤木かん子還暦おめでとう企画】 7 目覚めよというこえが

7 目覚めよというこえが   by D.S./東京都

かんこさんの文章との出会いは子どもが生まれてからとったフェリシモのカタログでした。
本好きの常でおもしろいと思ったら著者名で検索して片っ端から本を読む。
そして私が受けとったのは「次世代がひかえている以上、大人はすべからく成熟して子どもに相対してね!」というメッセージでした。
総ACといっても過言ではない1970年代生まれ。「おとなにならなくちゃ!」と決意しなければ子供のままでしたでしょう。どこをみわたしても“成熟した大人“がいないところで、かんこさんが周到にお手本として示していたのは、何を見聞きしても動じない、好奇心旺盛でユーモアたっぷりのミス・マープル。
好奇心がいきいきとしていてユーモアがあれば、動じない方は何とかなるもので、それ以来十数年、子どもを育て、子どもたちと付きあうなかでの難局には、飄々としたミス・マープルを思い描きながらなんとか今までやってきました。

またかんこさんご本人との出会いは某市の小学校図書館へ指導にいらした折りでした。作業の次第を聞くのかな、と思っているうち話はみるみる面白い方へ脱線していき、
「日本の集団のなかでは自分で考えるやつはつぶされる。それがいやなら国外に行くしかない」といわれたときには、祝福の鐘が頭上で鳴るのが聞こえた気がしました。
ぼんやりと肌で感じていたことを言語化されてあまりにも嬉しかったので、帰宅するなり当時小3と小2だった子どもにもその日かんこさんから聞いた話をほかにものこさずくり返しました。
そして今、中1になった娘は「お母さんは見るからに変な人だから友達の前にこないで。私が擬装してるのもバレちゃうでしょ!」といい、
中2の息子は「オレを色眼鏡でみて悪く言うやつは、そうでもしないと自分のプライドが保てないんだよ。そんなやつ相手にできないだろ」と言います。

こうして振り返ると、私はかんこさんのおかげでACの影から抜けだし、子どもたちは潰されることなく大きくなることができました。

かんこさんにいただいたご恩を直接お返しすることはままなりませんが、これからも仕事でであう子どもたちの閉塞感に風穴を空けられるように、あの手この手を尽くしていきたいとおもっています。