かん子の連載

【赤木かん子還暦おめでとう企画】 11 ボロボロになったポプラディア

11 ボロボロになったポプラディア   by J.S

2003年頃、山形県にある小さな町の小学校に勤めていた時のことである。
学校ではちょうどポプラディアを買ったばかり。
活用の仕方がわからず、書架の下の方に眠ったままになっていた。
赤木さんが講演にいらした時、希望する学校でポプラディアの使い方をレクチャーして下さるということを耳にし、早速手を挙げた。
3年生から6年生まで100人の子たちが入れるのは、音楽室しかなく、ピアノをバックにしての授業が始まった。
子どもたちは初め、赤木さんの鮮やかな髪に、クスクス笑い声を立てていたが、話が始まるといきなり静まり返った。
百科事典の言葉の解説の後、つめやはしらの説明を聞き、更に「アンパンマン」「ドラえもん」を例に、言葉の引き方を教えてもらう。
そんな身近な言葉が、百科事典の中に載っていたことを初めて知り、子どもたちはどよめいた。
ポプラディアへのスイッチが一瞬で入った。
その後
「縄文時代、土器、模様」を例に、調べ学習の
『テーマが簡単に見つかる三点決め』
の方法を聞いて、レクチャーは終了する。
子どもたちは終わるのを待ち構えていたように、赤木さんの周りに殺到した。
今聞いたことを自分で確かめたくて仕方ない様子で、我先にと各々ポプラディアを引き始めた。
私も
「これを知っていたら、卒論であんなに苦労することはなかったのに!」
と、思わず口をついて出た。
そのあと百科事典ブームが起こり、静かだった図書室が、言葉を調べる喜びを知った子どもたちで賑わうようになった。
その年のベストセラーは「ポプラディア」となり、半年後には背中がすりむけ、継ぎ目がガタガタになった。
次の春、回っていらした出版社の営業の方が、
「一年でこんなにボロボロになるまで使い込まれたポプラディアを見たのは初めてだ!」
と、感激して帰っていかれたことが、今でも忘れられない。