かん子の連載

アメリカの大統領権限について、長崎大学の広瀬きょーじゅ、に、お聞きしました。

アメリカの大統領権限について、長崎大学の広瀬きょーじゅ、に、お聞きしました。
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*** アメリカの大統領権限について ***

アメリカの場合
行政(政府)
立法(議会)
司法(裁判所)
の三権分立がとても厳格で、どこかに権力が集中しない仕組みになっています。相互に独立性が高いのです。
大統領は行政の長として、軍隊を含め、すべての行政機関、公務員に対する命令権を持っていると言っても良いのですが、アメリカの場合
大統領や長官(大臣)

議員
は兼任できず、大統領は議会での審議に直接関与することはできません。
大統領が法案や予算案を直接議会に提出することもできません。
逆の言い方をすれば、議員は各省の長官になることはできないので、日本のように国会議員が直接各省庁をコントロールすることもできません。
アメリカでも入国管理は当然、行政の一部なので、トランプ大統領がやったように
「○○国人と××国人は入国させるな」
という指示を入国審査官に向けて、大統領令として出すこと自体は大統領の権限として形式的には可能だと言えます。
しかし、大前提として行政は法律に根拠のあることしかできず、また当然法律に反するようなことをしてはならないことになっているので、大統領は法律の許す範囲内でしか行政機関に対して命令を出すことはできません。
仮に議会が
「○○国人と××国人に対してはビザを免除し、入国を認める」
という法律を作れば、大統領はそれに反する命令を出すことはできなくなります。
ちなみにこういう事例は少なくないみたいです。
例えば
「不法滞在者である◎◎氏とその家族に対し、特例としてアメリカ国籍を付与する法律」
みたいな決定って、結構あるらしいです。
こういう決定が議会で
「法」
として可決されると、仮に大統領が
「◎◎氏は○○国人だから、本来不法入国として国外退去・・・」
みたいなことを言っても議会で成立した
「法」
が優先されることになり、大統領は議会の決定に従わざるを得なくなります。
問題なのは、日本でもそうですが、法律って結構基本的なことしか決めてなかったり、曖昧な部分があったりすることです。
その場合、大統領が自分の判断で決定できる部分が大きくなります。
基本的に
「誰を入国させ、誰を入国させないか」
は行政の判断によるところが大きい……つまり大統領の権限で決められる裁量の余地が大きいということになります。
ただし、基本的な原則は法律に規定されているし、
自由
平等
信教の自由
のような大原則は憲法に規定されています。
それに違反するような逸脱や権限踰越が疑われるような場合には、訴えがあれば裁判所で判断することになります。
今回トランプ大統領が特定の国の国民の入国を差し止める大統領令を出したことに関しては、いくつかの訴訟が起こされた結果
「大統領の権限を逸脱している」
つまり
「法律に基づいていない」
という判決が出て、大統領令は無効となりました。

簡単にまとめると、アメリカ大統領は行政の長として、行政機関と公務員に対して命令することができますが、その命令はあくまでも法律に基づくものでなくてはならず、議会は法律を作ることにより、また裁判所は大統領令が法律を逸脱していないかどうか審査することにより、大統領の命令をチェックすることができる、という仕組みになっているわけです。

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どうもありがとう。
とてもよくわかりました。