かん子の連載

四ッ谷から引っ越しするのに、

四ッ谷から引っ越しするのに、前の道の途中の家が建築中で毎日道が塞がれるのでトラックは通れない……。
ということがわかったので、トラック借りていっぺんに運ぶのはあきらめて、工事をしてない真夜中にこそこそと引っ越しをしている。
まさか、真夜中にトラックの音をたてるわけにもいかないからね。

うーん。
まるで夜逃げ……というより夜逃げそのものだな、どうみても不審人物だよ、うちら……と思っていたら、昨日の真夜中、一時過ぎに、台車に電子レンジと、どうみてもバースツールとおぼしきえんじいろのビロードの椅子を三つも積み上げてゴロゴロと押してくる中年のおじさんとマダムのふたり連れがいた。
どっからきたの?
どこへいくの?
この、真夜中に??

毛皮のコートにハイヒールのマダムは驚く私には目もくれず、悠然と夜の闇に消えていった……。
後ろにバースツールを従えて……。

夜中の一時に本棚抱えて歩いているくらいは別に奇妙でもなんでもないのね。

さすが四ッ谷……。