かん子の連載

【赤木かん子還暦おめでとう企画】 16 読み聞かせの基

16 読み聞かせの基本   by 福岡の山口

子どもの本に関わる仕事をするなら読み聞かせの基礎知識は必須……と考え、司書になったあと、できる限りあちらこちらで講演を聞きまくりました。
作家、出版社の人、大学の先生、読み聞かせのボランティア、本屋さん、評論家と呼ばれる人、司書…
何人の話を聞いたかわからない……。

なるほどと思うこともあれば、ひとつの感動的なエピソードで根本の間違いを煙にまく人もいたり、なかなか面白いものです。

そのなかでもかん子さんのは(特に読み聞かせについて)、ぜひ多くの人に聞いてほしいと思った講演でした。

詳しくは『かならず成功する読み聞かせの本』自由国民社 2008をお読みになってくださればわかりますが、目の前でかん子さんに言葉にしてもらうと、心に沁みます。

私が一番
おおっ!
と思ったのは、自分の好きな本だからといって選ばない、という点でした。

その頃、読み聞かせを始めて数年経っていた私は、所謂王道と言われる方々の著作を読んだりして
「読み聞かせこうあるべき!!」
みたいな感覚に支配されていました。
本に優劣(無くはないが)をつけてみたり、新しい本を否定してみたり……今、思うと赤面してしまいますが、
いつも“本として”『高級』なものを『高級』なものをとそればかりを考え、お客さまである子どもにとっての面白さや、話の長さは二の次にしていた部分がありました。

かん子さんは、子どもがその読み聞かせの時間を「幸せ」と感じる時間にしなければならない、と言いました。
そうか、読み聞かせは幸せな時間を作り出すものなんだ!
押しつけたら、何にもならないんだ!
一度わかってしまえば、当たり前すぎるくらい当たり前のことですが、なかなかそうはっきり言ってくれる人には出会えていませんでしたので、とても新鮮でした。
かん子さんの“読み聞かせの基本”を聞いてからは、自分が読んでもらう子どもになって考えて、読む本を選ぶようになりました。
30年経たないと価値がないなどと言わずに、どんどん新しい本を買い、どんどん新しい作家を応援しようと思うようになりました。
今、本屋さんには、とても素晴らしい絵本がたくさんあり、未来の定番を探す出す楽しみは格別です。

ありがとう かん子さん