かん子の連載

【赤木かん子還暦おめでとう企画】 34 本なんて、読まなくたっていいんだよ

本なんて、読まなくたっていいんだよ   by 須藤倫子 ブックトーカー/三鷹市文庫連絡会

かん子さんの文庫「海賊船」のお手伝いをしていた時期なので、かん子さんがアラサー、私がハタチ前の頃のこと。
 文庫なんだから、来た子の本選びのサポートや、読み聞かせをしてあげればいいんだな、という気でいたところ、確かに子どもたちは
「これみたいな本、他にある?」
「次これ読んで」
と言ってきてはくれるのですが、どうも目的は本ではないのではないか。
おねーさんにしゃべりかけたりくっついたり膝に乗るほうが主目的なのではないか。
そう気づいて私はとまどっていました。
ここは文庫なのに……。
 私自身が子ども時代を過ごした家庭文庫は、地域の熱心なお母さんたちが子どもの本についてイチから勉強しながら運営していたところで、本をみんなで楽しみつくそうという雰囲気に満ちていて、子どもたちは自分のペースで好きなように本と向かい合っていました。
だから「文庫」ってそういう場所、という固定観念が私の中にあったみたいです。
 「あの子たちは本を読みに来ているわけではないんだね?」
その日の文庫の時間が終わり、お昼をいただきながらそうつぶやいた私に、かん子さんが言ってくれたのがこの言葉でした。
「本なんて、読まなくたっていいんだよ」
 本はたしかにそれを読むいろんな人を幸せにしたり、生きる支えになってくれたりする。
でも大切なのはその人がしあわせになることで、本を読むことが大事なんじゃない。
本を建前にしか愛情をねだれない子がいるなら、とりもなおさず抱っこしてあげればいい。
 本なしには生きてこられなかったかん子さんが、やはりそうだった私にくれた大切な言葉です。

 現在私は地域の家庭文庫をベースに、本と人を繋ぐ活動にいろいろ取り組んでいますが、今もこの一言をいつも頭の片隅に置いています。