かん子の連載

【赤木かん子還暦おめでとう企画】 40 柔らかい頭で

柔らかい頭で   by サボ君

3年前、小学校の図書館司書として勤務を始めたとき、まず、書架にぎっしり並ぶ古い本に愕然とした。
なのに
「1冊も捨てないで」
と先生方はおっしゃる……。
書架整理をしながら、ため息の日々……。
棚の前を通るだけで気が
滅入る。
「隠せばいいんだよ。」
そんなときに、かん子さんに言われた。
隠す?
私は書架から抜く=廃棄しなければならない、と思い込んでいた。
でもお客さまの目に見えなくなればいいんだ!
光が見えた。
 とにかく本を抜きまくった。
そして、すでに満杯のカウンター周りに、無理やりスペースを作って収納場所を確保した。
書架はスカスカになったが気持ちがいい!
古い本がいなくなったら、新しい本が生き生きと主張を始めた。
スカスカの棚は面出しでゆったり。
子どもたちはもう無理やり本を押し込まなくてもよくなった。
書架整理がしやすくなった、とボランティアさんの評判もあがった。
 総冊数は変わらないのに、書架は確実に明るくなった。
抜いただけなのに……。

 次はもうひとつの大きな問題……。
それは、本が1桁と色シールで分類されている、という点だ。
つまり、4類のなかが、黄色や赤のシールで分けられているのだ。
勤務する2校が2校ともそうだった。
しかもそれぞれの学校でルールが違う。
たとえば、同じ
「4類の黄色」
でも、あちらでは
「算数」
こちらでは
「地学」
だったりするのだ。
さらに
「動物」
というくくりで一色しかないので、アリもツバメもゾウも全部一緒くただった。
これはもう分類してある、とはいえないと思った。
手に負えない。
もちろん子どもたちも本を探せないし戻せない。
 かん子さんに訴えると
「色シールはダメなんだよ。色には意味がないでしょ?だからいつまでたってもそれがなんだったのか覚えられないし、とまどっちゃう。それに、色シールの種類がそもそも少なくて足りないし……。とにかく一番始めに4類の棚をしっかり作る。子どもたちは気がついてくれるし、分類を理解してくれるよ。」
とーー。
 これまた頭の固い私は、分類のしかたを変えるなら全面的にやらなくてはならないと思いこんでいた。
でもそれではいつまでたってもなにも変えられない。
そうか……。
一部分でもいいんだ!

早速4類の棚作りに取り組んだ。
他のジャンルは1桁のままだが、4類だけはそのジャンルに必要なところは3桁、4桁まで分けた。
アリは“昆虫の486.7”に、
ツバメは“鳥類の488”に、
ゾウは“哺乳類のゾウ目489.7”にーー。
本のあるべき場所がはっきりし、間違ってもすぐに気づける。
子どもたちは自分で本を探し、返せるようになった。
もちろん、文句を言われたことなどない。

 司書3年目に勤務校が変わった。
けれどもやることは同じだ。古い本を抜きまくり、4類の棚を整える。
それがスタートライン。
たぶん私はどこに行っても、ここから始めるだろう。
 かん子さんの考え方は柔軟だ。
できることからやればいいんだと肩の力が抜ける。
ああ、それならできる、
と思える。
自分のガチガチの頭をかん子さんの言葉がほぐしてくれる。