かん子の連載

【赤木かん子還暦おめでとう企画】 41 かん子さんが教えてくれたこと

かん子さんが教えてくれたこと   by サイトブラリアン

今から9年前のことです。 あのオレンジ色の本
「調べる力を育てる授業」を図書館でみつけたときの衝撃はいまだに忘れられません。
書評家だと思っていたかん子さんが、小学校で先生と一緒に調べ学習をやって、それを本に書いていました!
私は一気に読み、 そうだよ、これだよ?? 私が知りたかったのは?? そんな思いがこみ上げてきて、感動のあまり泣けました。
と同時に眼から大ウロコが落ちたのです。
今、学校に必要な授業はこれだと思いました。
私のいっている学校では、 夏休みに「一人一研究」という宿題が出るのですが、子どもは何をどうすればよいかちんぷんかんぷん……。
夏休みのことは親に丸投げという暗黙の了解ができていました。
親にお任せで先生は悔しくないのだろうか、教えることが仕事では? そう思っていましたが、この本を読んで、調べ方を教えられる教師はすくないのだ、ということがわかりました。
私のモヤモヤはかん子さんのこの一言
「教えないのにやれって言うな」
で救われ、調べ学習を教えられる人に自分がなろう、と決意したのです。
かん子さんは子どもが困ることに敏感な人です。
この本には
「勉強は実技である」
からはじまり、役に立つ 内容がたくさん詰まっています。
調べ学習はまさに実技です。
そうしてしゃべってもらったら、子どもにも理解できて、一生使える技術になる……。
それは、学校を卒業したあとに続く長い人生で必ず役に立つことでしょう。
自立の助けとなるからです。
夏期講習で司書を取り、念願の学校司書になって3年目、かん子さんの指導の元、「12歳のハローワーク」と題する仕事の調べ学習の発表校となる幸運に恵まれました。
学問の基礎は定義と分類であること、図書館と百科事典の使い方、情報の集め方、情報を集めないと考える材料にならないこと、レポートのまとめ方、公共図書館を使う実習、発表のための声の出し方に至る一連の勉強を支援させてもらいました。
この体験は、子どもにも、担任の先生にも、私にも、非常に学びの多い愉しい授業となりました。
「人工的なものは説明しなければ使えるようにならない。しゃべって伝達するやりかたは一番効率がいい」 のは本当で、6年生は全員が堂々と発表しました。
それ以来、私は百科事典の話を1年生にチャンスがあればしてきました。
1年生は食い入るように見て、よく聴いています。
「知識は力です」
かん子さんの言うとおりです。
もう一つ、かん子さんに救われた言葉がこれです。
「どこの大学でたか、じゃない。本人の能力以外、判断基準はないんだよ」
こんなに明解に学歴偏重をばっさりとやった、わかり易い言葉は聞いたことがありません。
かん子さんの言葉は立て板に水の如く流れるようで、とてもわかり易いです。
書いている文章もそうです。あるとき、あまりにスルスルと書かれるので
「どうしてそんなに、読んですっとわかる文章が書けるんですか」
と聞いたことがあります。そうしたらかん子さんは
「そういう文章が書けないときは体の調子がどっか悪いんだなーってわかるね」と言われたのです。
モーツァルトかと思いました。
彼の楽譜にはほとんど書き直しがないのだそうです。天性の物書きなのだな、とおそれ入りました。
本の話も大好きです。
紹介してくださる本はどれもおもしろい。
「司書は読んどけ本」 というのもときどきおっしゃるのですが、ぶ厚いものが多くて……。
一体かん子さんはどのくらいのスピードで読むのでしょう?
読む速度も足りず
「人に何かを説明しようと思ったら、言語化することが必要」
な書く力もまだまだ足りない。
なので、自称追っかけ弟子の修行はこれからも続きます。
どうぞよろしくお願いします。