かん子の連載

【赤木かん子還暦おめでとう企画】 52 美味しいものは人を助ける

美味しいものは人を助ける   by 児図塾世話人:佐々木かぴ

かん子さんは“おいしいもの”を見つけるのに長けた人だ。
食べ物はもちろん、本だったり人だったり、空間だったり、町だったり…。
かん子さんに教えてもらっていなかったら、自力では到底出会うことがなかったものがたくさんある。

かん子さんに出会ったのは、私が司書になりたての頃だ。
初代児図塾の世話人の大先輩たちが企画した講演会に恐る恐る参加したのが最初である。(論客だから気をつけてね~と職場から送り出されたので、赤い髪の講演者が講演前にみんなと談笑してなんか食べてた時には、ぶるぶる震えてた…はず?)
だから私の司書人生は最初からかん子さんに色付けされている。

その最初の頃に教えられたこと
“司書にとって必要な三要素”は、「優秀な先生であり」「優秀な事務職であり」「大道芸人であること」だった。(最初の2つに「優秀な」が付いていることがミソ)
人と多く接する職業が司書の素質に含まれているのは、司書は、本に向き合っているだけではなく、人と向き合うことにこそ面白さ、大切さがあるということだろう。
人に向き合うと、より居心地がいい空間を作りたくなるし、より使いやすい本の並べ方をしたくなるし、そのサービスができるよう自分を鍛えたくなる。
あと「身銭切らないと身に付かない」
つまりプロに教えを乞うのに、無料で参加するのは失礼だということだ。
そのスタンスで、児図塾(現在冬眠中)を開催してきた。
私自身も、司書としてお給金をいただいているので、プロとしての仕事をしなくてはならないと気付いたのも、かん子さんのこの言葉からである。
※児図塾とは…自分たちで、聞きたいプロを北の大地に呼び、ちゃんと参加費を払って参加してくれる人を集め、講演会を開く私塾。正式名称は「児童奉仕図書館塾」。今は冬眠中だけど、復活したい。FBもTwitterもあるよ。

私は、最初は公共図書館の司書としてかん子さんの講義を受けたり、図書館改装に参加したりしていた。
かん子さんに接する内に、自分の夢であった児童サービス、特にヤング・アダルト向けのサービスに携わりたい気持ちが強くなり、学校図書館で働く決意をした。
もちろん公共図書館の仕事も魅力的だった。
でもかん子さん関連のイベントに参加する度にその思いは強くなり、学校で働く司書になったのである。
理想と現実にはもちろんギャップがあり、かん子さんに泣きつくことも多々あった。
でもかん子さんは慰めの言葉ではなく、より現実的にその壁を乗り越えるか、端的な言葉で教えてくれるのだ。
慣れない職場でげっそり(人生の中で一番)痩せた時には、たくさんのおいしいものを体験させてくれた。たぶんあの時の体験がなかったら、私は学校にいる司書として働くのを続けられなかったと思う。

かん子さんからの助言を必ずしも実行できているわけではないけれど、利用者に近いところで、居心地のいい空間、役に立つ本を、ちょっとでも提供できているのではないかなーと思っている。

私が、かん子さんの一番好きな言葉、仕草は、おすすめの“おいしいもの”を私が頬張って「おいしーい!」と叫ぶ度に、「だろー!」とにんまりするところである。“おいしい”を共有するって嬉しいのだ。