かん子の連載

LGBTQの本棚から 第6回 「不良少女」

今回ご紹介するのは少女漫画雑誌 「りぼん」で連載されていた「おもいで金平糖 」(持田あき)のなかの“不良少女”というお話です。
一粒口にいれるとタイムスリップしてしまう不思議な金平糖を狂言回しに展開される1話完結のシリーズで、この話は3巻に入っています。

第5回で紹介した映画「リリーのすべて」はMtF(Male to Femaleの略……、男性から女性)でしたが、今回は逆のFtMの子が出てきます……。

主人公の少年、蛍のクラスメイトである花里は女の子として生まれた男の子でした。
花里の
「私の心の中には男の子がいて、でも、今まで何度親に言っても、髪を伸ばせとか、リボンまでつけられる有り様でわかってくれない……で、 ばれそうになるたび、転校させられて」
「……早く大人になって、誰も花里を知らない場所に行きたい」
という言葉に、蛍は何も言えず、そのまま花里は転校することになってしまいます。
「君が誰にも言えなかった寂しさを僕が代わってあげられたら……」
そう思っていたのに…。

そして転校前、二人は思い出の銅像の前でもう一度会うことになります。
その銅像は「心友」という題名で、蛍と花里にどこか似ていました。
銅像の前で話しながら金平糖を食べたとき、突然二人は大正時代にタイムスリップしてしまいます。

その時に二人はバラバラになってしまい、蛍は自分と瓜二つの少女「かずら」と花里にそっくりな少女「雛菊」と出会います。
かずらと雛菊は恋人同士でした。
女同士であること、雛菊が華族令嬢であり身分違いの恋であることから駆け落ちの計画を立てているところに
「かずらと瓜二つな少年」蛍が現れたのです。
蛍は二人の計画を手伝いながら、花里を探します。

この駆け落ち事件の結末は、ネタばらしになってしまうので、実際に読んでみてください。

タイムスリップを終えて現代に帰ってきた二人は銅像をみて、題名が「心友」であることの意味を考えます。
銅像は、かずらと雛菊をモデルにしたものだったのです。
「男も女もなくて
恋も愛も超えた関係」
それが”心友”なのだと、二人は思います。

そして花里は決意します。
「新しい場所で、今度こそ自分を隠さないで頑張る」とーー。

この漫画は友だちに教えてもらったのですが、初めて読んだときは泣いてしまいました。
その理由の1つが、花里のカミングアウト(自分のセクシャリティ等を打ち明けること)を蛍が否定せず、最後には良き理解者となってくれたこと……。
これは当事者からすると、とても嬉しいことなのです。
カミングアウトはとても勇気のいることで、否定されると大きなショックを受けます。
カミングアウトする、ということは、相手をかなり信頼した、ということですから、そういう相手に否定された=受け入れてもらえなかったとなると、そういう自分はダメなんだ……という自己否定へいつてしまいがちになるからです。

だからせめて、受け入れられなくても否定だけはしないでください。
蛍の花里に対する対応や気持ちはとても優しい……。

2つ目は、自分を隠して生きていた花里が自分を隠さないで生きると決めたこと……。
これは自分を肯定しないとできないことで、そう花里に思わせてくれたのは間違いなく蛍でした。
僕には
「蛍に受け入れてもらい、花里は自信を持てた」
ように見えました。
身体の性でなく心の性に合わせて生きていくには大きな覚悟が必要になります。
自分の経験からいっても、本当の自分を否定されたり、いろいろな場面でつまずくだろうということは簡単に想像できます……。
それでも自分らしく生きていくことを決意した花里の姿に心を打たれました。

「かずらと雛菊の恋」
も泣けるポイントの1つです。

いかにも少女漫画した少女漫画の短編集ということで購入のハードルは下がるかな?と思います。

LGBTQについてちょっとだけ知ってほしい人に読んでもらったりするのにもいいかもしれません。

「家族にカミングアウトしたいけど、LGBTQについてどう思ってるのか知ってからにしたい…」
なんてときに、リビングにそっと置いてみたりもできます。

学校の図書館にも、かわいらしい絵柄なので置きやすいと思います。

ぜひ読んでみてください!