かん子の連載

【赤木かん子還暦おめでとう企画】 65 スーパーマン参上

スーパーマン参上   by みかんの花

その日は台風が押し迫っていた。
今日中には自分の家に帰れるだろうという甘い期待は、瀬戸大橋が封鎖されたという朝のニュースで吹っ飛んでしまった。
私は、遠路はるばる高知県に図書館の改装に来ていたのである。
初参加した2日間におよぶ改装のお手伝いは、交通機関の少ない山の学校……。
利便性を考え、高知市内からは遠く、学校にほど近い古い旅館に予約を取ったのだが、これだけ大きい台風がくると、高知へ帰る道が途中水没する可能性が……。
かん子さんに勧められていたホテルは市内にあった。他のみなさんはそちらに宿泊し、車で学校とホテルを行き来しているようだった。

そして、2日目の朝、台風到来。今日の改装作業はあるのか、それとも中止なのか。中止だったとしてどうやって市内まで帰ればいいのか、と途方にくれていたその時、うれしいメールが……。
「助けに来たよ。がちゃんが運転してる。もう少しで着くから帰る支度をして待っていなよ。」
かん子さんからの救助の連絡だった。
本当に来てくれるの?
高知市内からこの暴風雨の中、32kmの道のりを私一人のためにわざわざ車で助けに来てくれるなんて……。
すごい、すごすぎる。
と、思うのと同時に申し訳なくなった。
支度を終えて待っていると、着信が……。
「旅館前に着いたから出ておいでよ。」
と優しい声。
ああ、やっぱり本当に来てくれたんだ。
心細かった気持ちが一気に緩み、慌てて玄関に出ていった。
かん子さんが土砂降りの雨の中、傘を差して待っていてくれる。挨拶もそこそこに車に乗り込むと、大雨波浪警報の中、市内まで引き返すことに。
安堵といたたまれなさを感じる私にかん子さんは言った。
「最初から全部頼って聞いてくれればよかったんだよ。泊まるとこも交通手段も。誰かいるんだよ、車を出して一緒に行くっていう人が。だから一人で思いこまずにいろいろ聞いて頼ってくれってことさ。」
出発前のちょっとした遠慮が、さらに大きな迷惑をかけることになってしまった。かん子さんの器の大きさに触れた瞬間だった。