かん子の連載

【赤木かん子還暦おめでとう企画】 71 「赤木かん子さんについて」

「赤木かん子さんについて」   by うすゆきそう文庫 澤口杜志

かん子さんとのお付き合いはかれこれ30年になります。
初めてお会いしたのは、今はありませんが渋谷の『童話屋書店』でした。
かん子さんのミニミニトークの会でした。
色白の小柄な痩せた20代後半のかん子さんは、私に元気よくいろいろ聞いてきました。
「何読んでるの?」
「何が好き?」
今思えばリサーチされていたのですね。
幼い我が子を連れてきていたら
「友だち作って預けっこするんだよ!」
とアドバイスされました。
児童書の主人公にでも、何かと「自我がない!」と怒ったように言います。
「日本人は『自我』をもっちゃいけないように教育されているんだよ。」
と……。
私はかん子さんのいうところの『自我』があるのだろうか?と、30年自問しています。

常に先を見ていて、例えば「オタク」という言葉を教えてもらったのもかん子さん。
『お宅』かと思ったら、大間違い。
今じゃ常識の言葉に。

ストーリーテリング(語り)にのめり込み、自分だけに酔いしれ、聴く子どもたちのことなど考えない(黙って聴くのが当然でしょう!みたいな)のを『カラオケストーリーテリング』といわれ……。
ああ、耳が痛い!

「人はね、大事に思っている人しか助けられないんだよ。」
いろいろ悩みを聞いてもらった時に言われた言葉。
「『○○さんだったらどうするだろう?』って、信頼している人を思い浮かべて考えてごらん。答えが出る可能性は高いよ」
とも言われました。
一時期たくさん泣き言を聞いて頂きました。
感謝でいっぱいです。

学校などのボランティアによる読み聞かせが充実してくると
「自分の子には誰だって読んでやれる。お母さんの声は世界で一番美しい声なんだから。でも、人前で語ったり、読むって『芸』なんだよ。誰にでもできるもんじゃない。才能がいるんだよ。公園で立って通りすがりに絵本読んでみたらいいよ。実力が分かるから。」
聴き手の子どもたちのことに考えて
「学校でお行儀よくして、聴きたくないおばさんの『読み』にお礼を言って、拍手もしなくしゃいけないなんてひどくない?目の前の子どもたちを楽しませてやりたい、幸福にしたい、と思ってくれる『気立てがよい人』が子どもたちの前に立って欲しい。」
と、慣れてない人でもこれを読めば間違いない、絶対失敗しない『読み聞かせ』に向く絵本のテキストまで作ってくれました。
常に子どもたちの目線で考えるかん子さんを尊敬しています。

 とにかく感情的にならない。建設的に考える。
「何が問題なの?」
とよく言います。
問題が判明したら、どうしたら解決できるか?
と、考えることができる。
「なにが問題かわからないうちはなにもできないでしょう?」
とーー。
また、自分の分からないことは、その道のスペシャリストにとことん訊きます。
そして、自分ができないことは代わりにしてもらいます。
そういう意味で育てられた人はたくさんいます。
かん子さんは、教育者かも。

 近年子どもたちが待ちきれなくて本読みに走っていくような『学校図書館』作りに日本中を回っています。その手がけた図書館の居心地のよさは見たことのある人はお分かりになっていると思います。
そのアイデアと発想と、出来栄えには脱帽です。

 かん子さんはよく怒ってますが、その中にいつも『悪意』がありません。
だから嫌な感じが全くないのです。辛口ですが、私は『愛』を感じています。

「アクティブラーニング」が今後どうなっていくのか見守りたいと思います。
かん子さんからまだまだ目が離せません。