かん子の連載

【赤木かん子還暦おめでとう企画】 83 「調べる最初は百科事典!」

「調べる最初は百科事典!」   by 長崎 西川

 私は、社会科を研究している長崎市の小学校教師です。この長崎市には、社会科学習をこよなく愛し、研究する「長崎社会科サークル」という研究グループがあります。
 この社会科サークルは、問題解決学習の一形態である「探究学習」を取り入れ、それをアレンジしながら子供の「わかった!」という喜びを目指しています。
 この学習形態には、大切な3つの要件があります。それは、
1 「中心概念」の形成
2 「情報処理能力」の育成
3 「一小単元一サイクルの授業過程」の授業づくり
です。この学習形態を研究し続けて、52年目になります。
 この3つの要件を見ると司書さんたちは、目が輝くのではないでしょうか。そうです。社会科は、司書さんたちが活躍する場面が非常に多い教科なのです。
 では、この3つの要件の解説を。
1 中心概念とは
 中心概念とは、学習を進めるそれぞれの小単元において、最終的に子供にとらえさせたい転移度の高い知識(概念)ととらえています。
2 情報処理能力の育成とは
 社会科学習で育てたい情報処理能力は、小単元の冒頭で子供が出会う(正確には教師が意図的に出合わせる)社会的事象を正確に読み、関連付けて考えることを通してわかること・考えられること・疑問に思うことなどを整理すること。そして整理してできたテーマに対し、過去の学習経験や生活経験等を関連付けながら思考を深め予想すること。各自が考えた予想を視点にして、それを確かめるための情報を収集し、選択し、読解する。また、いくつかの情報を関連付けて事象の意味をとらえること、ととらえています。そのためには、地図の読み方や各種グラフの読み方等も指導しないといけません。
3 「一小単元一サイクルの授業課程」とは
 一小単元というのは、教科書記載の小単元にとらわれることなく、設定する「中心概念」をとらえさせるための単元ととらえています。この小単元を「事実認識」「学習問題(テーマ)の把握」「予想」「検証計画」「検証」「結論の吟味」という流れに沿って学習を進めていくのです。
 この学習形態を研究してきて感じたことは、「情報収集が弱い」ことです。子供が自ら資料を集めるのではなく、教師が準備した資料の中から選択して考えていくのです。「ここを何とかしたい、子どもが自ら情報を集め、調べて行くようにしたい。」と思っているときにかん子さんと出会ったのでした。
 かん子さんの「調べる時の一番最初は百科事典!」。この言葉を聞いて、私は「これだ!」と思いました。
 社会事象と出会った時に分からない言葉や事柄を百科事典や国語辞典を引く。そうすることで、疑問がより詳しく膨らんできます。そうすることで、「自分が調べて解決したこと」がよりはっきりしてくるのです。
 そうなってくると、子どもは自ら的確に情報を収集することができるし、司書にレファレンスすることができます。
 かん子さんの「百科事典の授業」を経験してから、私は、社会の授業をするときは、学年フロアに百科事典と国語辞典を常備しておきます。それと司書さんに依頼するか、自分で「百科事典の授業」をするようにしています。
 この「子供が自ら百科事典や、様々な図書資料を活用して調べていく授業」の素晴らしさをたくさんの教師に分かってもらいたくて、少しずつでも教師に広めていこうと頑張っています。
 かん子さん、これからもよろしくお願いいたします。