かん子の連載

【赤木かん子還暦おめでとう企画】 86 文学少女💛!

文学少女💛!   by Isaac/大阪/公共図書館司書

三十年ほど前に「こちら本の探偵です」を読んだ時、児童書に対する熱い想いと愛情を感じる語り口調の文体が私には新鮮で印象的でした。こんな風に楽しく児童書を紹介されている本は初めてでした。「楽しい」、「面白い」という感想とともに驚きでもありました。興味がない、知らないという作品も、かん子さんが紹介している文章を読むうちに、どれもこれも読みたくなってしまいました。当時、周囲の児童書好きな人達にも、おもしろい本を見つけたと言っては「こちら本の探偵です」を紹介したものでした。
こんなに児童書が好きで、人のために時間を使って本を探してくれる著者って、文章は饒舌だけど、やさしくて内気な文学少女なのだろうなと勝手に想像して憧れておりました。
それからしばらくして図書館員になった私は、働き出して日の浅い時期に、文庫の方々が主催の講演会に行く機会を得ました。講師はなんと、あの本の作者の赤木かん子!ドキドキして講演会場に向かったあの日のコーフンした気持ちは今でもよく覚えています。会場に入ると、小柄な女性が講師用の机の上に腰かけて、脚をブラブラさせている姿が目に飛び込んできました。そして講演が始まると、その女性は開口一番、「何の話がききたい?ガラスの仮面の話でもしようか?それとも、文庫のおばさんはもう古いにしようか?」と、気の小さい私が周囲の文庫の方々の顔色を恐る恐る窺ってしまうような発言をされました。「えっ、この女性が?赤木かん子?」自分の思っていた内気な文学少女という想像とは少し(いや、かなり)違っていました。しかし私は「おお、ここは文庫の方々が企画された講演会なのに、いきなりなんということをかましてくるのだ。」と、その挑戦的で自信のある姿の、赤木かん子という人の魅力にノックアウトされてしまったのでした。四半世紀も前の初夏の午後の出来事です。
今回久しぶりに「こちら本の探偵です」を読み返しました。最初に読んだ時の楽しい気持ちと、かん子さんの児童書に対する愛情を改めて感じるとともに、かん子さんの初々しさも伝わってきました。
かん子さんがこの本の最初の頁で「無謀に見えるかもしれませんが、私は作家になりたいのです」と書かれていましたが、今や、書きに書いて、編みに編んで(おかしな日本語ですみません)、その上に翻訳もされ、わが職場の図書館のコンピュータ端末で著者名「アカギカンコ」で検索してみると、275件の情報が出てきます(2017.2調)。かん子ファンとして、作品を追いかけて読むだけでもたいへんな量の仕事をされたものです。
「こちら本の探偵です」の中に「今その人が抱えてるモンダイに一番応えてくれる本が、イイ本、なんだから。」という一文があります。この言葉が、赤木かん子さんの根幹のように私には思えるのです。そして、ずっとぶれずに、この視点で本を紹介され続けてこられたように思います。これからもきっと、ずっとそうなんだろうなと思っています。