かん子の連載

【赤木かん子還暦おめでとう企画】 103 かん子さんとの出会い

かん子さんとの出会い by「愛媛の寺田です」

かん子さんにお会いしたのは16年前の講演会。
当時、読み聞かせボランティアの1人だった私は、全身に冷水を浴びせかけられたような気分になった。
「良書」と思い込んだ絵本を抱えてせっせと学校に乗り込んでいた頃……。
「困るんだよ、あんたたちみたいなのが学校に入ってくると」
「子供たちは、暇なおばさんの相手をしてる時間なんかないんだよ。」
「どうしてもやるんならその時間にもっと責任持ちなさいよ。」
子どもたちに必要なのは、「お膝に抱っこ」で、どんな本でも「読んで!」にいくらでも応えてくれる気立ての良いおばさんだと……。
私は勘違いも甚だしい変なおばさんだったんだ。
今は
「子どもたちにとって幸せな時間となるよう、責任を持つ」
ことを肝に命じている。

他県の図書館改装に誘っていただき、たくさんのことを教わった。
かんこさんが何やら話し始めると、作業をするふりをして、メモを片手に耳をダンボにして、背後に忍び寄っていた。

面白くて何度も参加した分類講座。
「もういい加減覚えて自立しなよ。あんたたちが自分でやるんだよ。」
と何度も言われた。
私はともかく、何度も参加していた皆さんは、おそらく自分で分類講座ができるけれど、かん子さんの声やテンポや脱線してゆく話を楽しんでいたに違いない。

かん子さんの話や授業は、常に
「子どもたちがより幸せに生きていけるために」
ということが根底にある。だから、困ったことがあって相談すると、あっという間に明確なアドバイスをくれる。大人として本当は当然なのだが、子どもたちを救うことに迷いがない。
図書館に来て
「オレは先生に理不尽に叱られた」
と大暴れした子がいた。
「暴れる子は、力があるんだよ。理不尽に叱られたんなら、先生に謝って貰いな。あんたが先生に言いなよ。」

また、私は、大規模校と小規模校の兼任なのだが、小規模校から苦情が出た。
「同じことをやってもらわなきゃ不公平だ」
と。この時は
「平等とは同じことをするのではなく、結果が同じになる事を平等と言うんだよ。」
というかん子さんの言葉をお借りして、先生に納得していただいた。

かんこさんに情報をもらって学校司書になり10年。まだ時々、学校図書館で「かんこさーん!」と天を仰ぐことがある。かんこさんに出会ってなければ、学校司書にはなっていなかっただろうけれど、学校図書館も子どもたち目線で作れていなかったと思う。(まだまだだけど…)
本当にかん子さんとの出会いに心から感謝している。