かん子の連載

水曜日の歌 ♬~ 第十四回

第十四回

博学と無学

あれを読んだか
これを読んだかと
さんざん無学にされてしまった揚句
ぼくはその人にいった
しかしヴァレリーさんでも
ぼくのなんぞ
読んでない筈だ

一生貧乏に苦しめられたのに飄々と生き“精神の貴族”と呼ばれた山ノ口貘、の詩です。
お金はなくても、ばくさん、ばくさん、とみんなに愛され、慕われ、敬愛され、それはいろいろ悔しかったでしょうが、辛抱してよく生き延びた人でした。
もちそんご存じでしょうが、ここでいわれているポオル・ヴァレリイは、博学で知られていたフランスの詩人です。
その人でも自分のことは知らないだろ、と自分に対してかさにかかってなじってくるやなやつに、真正面から怒るのではなくて、鮮やかに明るく切り返しているのです。

2017/09/13