かん子の連載

水曜日の歌 ♬~ 第十八回

茜指す紫野行き標野行き野守りは見ずや君が袖降る(あかねさすむらさきのゆきしめのゆき のもりはみずやきみがそでふる)

額田王(ぬかたのおおきみ)の、百人一首に入っている有名な歌ですね。
以前は大海人皇子と結婚して女の子を生んだ額田王は、いまは、その兄さんである中大兄皇子、天智天皇の妃の一人になってます。
で、この歌は、大海人皇子にむかって、やだ、そんなに袖を降って……、だれかに見られたらどうするのよ、という、恋が醒めた男をたしなめる歌とも、忍ぶ恋歌ともとれる歌で、だから額田王は兄弟ふたりでとりあわられた美女、ということになってました。
でも、これは宴席でよまれた戯れ歌だ、という説もあるそうで、ええええ~?
かつての夫に対してそんなことするかなぁ……。

まあ確かに、なんにもなくても歌、作っちゃうけどさ。
でも、結局本当のところは当人たちにしか、わからないでしょう。
下手したら当人たちもわかってないかもしらん。
彼女が美人だ、ということもどこにも書いてないそうで、まあでも才女だったことは間違いないね、達者な歌だもん。

ともかく、この歌のせいで、茜指す、といえば額田王……ひいては美女、のことになるみたいです。

2017/10/11