かん子の連載

水曜日の歌 ♬~ 第三十二回

駿河なる宇津の山辺の現(うつつ)にも
夢にも人に逢わぬなりけり

伊勢物語 第九段

これもなりひらが駿河の国ですから、静岡ですね。
蔦や楓が生い茂る暗い心細い道で修行僧とあったら、偶然知っている人だった……。
なので京にいる恋人に歌を渡してくれと頼んだ
という話。

“現実でも夢でも逢えなくて淋しいよ”
ですね。

でこれ以降、宇津の山辺、は旅に出た人が不安に思う所になってしまったわけです。

で、これを知らないと

兼好法師の

一夜寝し
萱(かや)の丸屋(まろや)の
跡もなし
夢か現か
宇津の山越え

昔通ったときに寝た、粗末な小屋はあとかたもないが、あれは夢だったのか現実だったのか

という歌がさっぱりわからないわけです。
意味はわかっても
なんでここで宇津の山辺がでてくるの?
宇津の山辺ってどこ?
ということが……。

つまり、誰かにコーチングされないと、古典は普通読めないのです。
これを自力で本読んで覚えられる人もいると思いますが、もしそういう人がいたらたぶん大きくなったら、日文の教授あたりになってるでしょう。
普通の人は解説がいる……。
でも説明されれば大抵の人は楽しめるようになるでしょう?
いまの小学生にとっては、パソコンのなかった時代の小説は、古典とまでいかなくても解説がいるんですよ。

2017/01/24