かん子の連載

水曜日の歌 ♬~ 第三十五回

江碧鳥逾白
山青花欲然
今春看又過
何日是歸年

杜甫のこれだけは知っててほしい詩、に何をあげるか、といわれれば、たぶんこれになるだろう、有名な詩です。
もちろんこれには中国語の発音、読みがあるわけですが、賢い昔の日本人は、これをそのまんま日本語にすることに成功しました。
その結果、中国語で書かれた文献を、翻訳、という手順を踏まずにすらすら読めるようになったわけです。
まあ、明治あたりまでは……。
たとえば森鴎外が夏目漱石に手紙を書く、ということになると漢文で書いたりします。
漱石が自分の弟子に、あした遊びに来ないか?
みたいなハガキをだすときは口語文でひらがな混じりですが、あらたまった手紙は漢文で書く……。
お互いに、それを読めたわけです。
どんなふうにか、というと

こうみどりにして
とりいよいよしろく
やまあおくして
はなもえんとほっす
こんしゅんみすみす
またすぐ
いずれのひにか
またきねんならん

と読んじゃうわけですね。

この、じかに翻訳、というのは、見るたびに凄いなぁ、と思うわけですが、これで

川は緑に、鳥はますます白く
山は青く新緑に
花も盛りになりつつある
今年の春もなにもできずに
過ぎていく
いつになったら
帰れるのだろうか

というように意味がわかっちゃうわけです。

すごいテクニックだよねぇ!

2018/02/07