かん子の連載

LGBTQの本棚から かんこ 第36回「南アフリカの青年のドキュメンタリー」

もう何年前だか思い出せないが(30年以上前だと思う)テレビで、南アフリカの青年のドキュメンタリーをやっていた。
彼は右半身が女性で、左半身が男性だった。
本当にみごとなほど、同じ顔の男性形と女性形だっだ。本当にアシュラ男爵っているんだなぁ、と思ったものだ。
でも彼の全身写真をオールヌードで出していて、それにはぎょっとしたし、これはこの人が黒人だからできるんだろう、と思うと(白人の青年ならやらないよな)それには腹が立った。
あまりにも素晴らしい肉体美なので、つい、見とれてしまったけど。

そうして彼は中身は男で、彼女もいて、成人したから手術ができる……。
もうすぐ男性になって結婚するんだ、と、とても嬉しそうに話していた。
そうか。
外側がどーでもいい、とまでは思わないけど、やっぱり意識が男だと思うなら男性だし、女だ、と思うなら女性なんだよな、当たり前だけど、と納得した。
その頃はトランスジェンダーなんて言葉は知らなかったし、そういう人がいるなんてことも初めて知ったから、その番組はとても衝撃だった。
その後、彼が幸福な人生を送ったのならいいな、と思い、いまでも少し気にかけている。
それを考えると、たった何十年の間に意識と知識は格段に変わったと思う。
いまだって差別はなくなったわけじゃないけど、聞いたこともない、という人は減っただろう。
いままでたった一人でひっそりと苦しんで死んでいった人たちのことを思うと胸が痛む。

2018年01月29日