かん子の連載

☆楽しい学校図書館のすぐに役立つ小話☆彡【文学について・その6】

次の転換期は1989年に起きました。
天皇が亡くなり、手塚治虫が亡くなり、バブルが弾け、日本は金持ちから一気に貧乏になりました。
重厚な社会派の松本清張に反発した島田荘司率いる(本人は率いたつもりはないと思いますが)新本格派、のミステリーが台頭してきて、ミステリー界は色が変わりました。
1989年から1993年にかけて、日本では森絵都、佐藤多佳子はじめ、そのあと活躍するヤングアダルト勢の大半がデビューしました。
93年に「羊たちの沈黙」が出て、アダルトチルドレン問題と異常快楽殺人に決着がつきました。
「十二国記」が始まりました。

というわけで、時代区分しているNDCがまるっきり使えないというわけではないのですが、でもそれでも、氷室冴子と新井素子と赤川次郎はどうするのよ、問題は解決しません。
それに1989年以降だって、田辺聖子やその他が書いていないわけではありません。

というわけで、時代区分の分類はやっても意味がないのがわかりました。

役に立つ分類はなにか?
まず、顕著だったのは
時代小説分類です。

公共には時代小説のファンがとても多く、そのファンの大多数はそれしか借りてくれないお客様です。
でも時代小説は、ハードカバー、新書、文庫でバラバラに出ていて、しかも著者のあいうえお順だと、出ていても気がつかないお客様が大半でした。文庫を読む習慣のある人は、ハードカバーの棚には行かない人が多いのです。
そのうえ人気の本はすぐに貸し出されて図書館滞留時間が短い。あることを知らなければリクエストもできません。
その前に、その名前が時代小説作家だ、ということがわからないと借りません。

というわけである図書館で、時代小説コーナーを作ってみました。
ハードカバー、新書、文庫関係なく集め、著者のあいうえお順に並べました。
そうしたら一週間のあいだに、なんと貸出は3倍になったのです。
えっ?
この本でてたの?
この作家って時代小説書いてたの?
でした。
そうして、みなさん、書架のはしから、読んだ読んだ読んだ読んでない、で借りていくかたたちですから、冊数が許す限り借りていかれます。

けれどもジャンル分類はNDCにはありません。
ジャンルは生まれ、成熟し爛熟し消えていくものですから、それに記号をつけるわけにはいかないからです。

たとえば一昔前には
動物文学
というジャンルがありました。
シートン動物記、をはじめ、日本の戸川幸夫、椋鳩十、児童出版社はどこも動物文学シリーズを持っていました。
山ねずみロッキーチャック、とか。
単発でも優れた動物文学が、山ほど書かれました。
それだけで6段埋まるほど本があったのです。
今その中で生き延びたのは、狼王ロボ、くらいなものだと思います。

というわけで、ジャンル分類は、一度分類したらおわり、ではなく、廃れたら解散!
しないといけないのです。
でもそれをしないと、文学の棚はどんよりしてしまう……。

子どもの本棚では、一番先に作ったのはホラーでした。

なんか怖い本、な〜い?
という、この質問を片付けられたら時間が半分浮く、と思うほど、聞かれたからです。
試しにおばけのシールを貼ってまとめておいたところ、ピタッといってこなくなり、やったー!
でした。

というところで、続く……。

2023/04/06 更新