かん子の連載

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(毎月一回の予定です)
ガーナのおすすめ本商会(18)

「保健室経由、かねやま本館。」
著者・松素めぐり
講談社

 あけましておめでとうございます。

 来年度の児童会長に立候補しクラス代表になったはいいのですが、もう一人の立候補者と児童会選挙をすることに。しかも相手は、みんなから人気のイケメンくんと戦うことになってしまい、絶望中のガーナです。

 今回紹介する本は
「保健室経由、かねやま本館。」
です。
この本は毎度お馴染み、行きつけ書店でかなり前に見つけていました。表紙に一目惚れし、ずっと紹介しようと思っていましたが、どんどん新しい本を買っていたせいで、本棚の奥の方に埋まってしまい、最近まで存在を忘れていました。
ようやく読了しました。

 本作は“中学生専門の湯治場”が舞台のお話です。学校に行きたくなくなったサーマこと佐藤まえみは、ある先生に出会います。

 髪の毛を一週間くらい洗っていないのか!
と思うくらいの山姥ヘア、ハスキーボイスの、第2保健室養護教諭・銀山先生の導きにより、“湯治場かねやま本館”に行くことになります。ただし、このかねやま本館に行くためにはルールがあります。

その1・紫色の暖簾は、けっしてのぞいてはならない。

その2・かねやま本館の話を、元の世界でしてはならない。

 などです。
 読んでいてドキドキと気持ちを掻き立てられるのは、かねやま本館に行ける有効期限中の30日間も、一日50分しかその世界には入れないことです。はじめにそれを知ったときは
「おいー! サーマ早く風呂に入れ!」と、とても焦りました。
 ちなみに、かねやま本館に行くためには、倉庫にある第2保健室に入り、銀山先生から手ぬぐいをもらいます。そして不気味な穴をはしごで下りていくと、雨に囲まれた神秘的かねやま本館が登場するという仕組みです。お風呂にはそれぞれ効果・効能があります。期限は何日までだとか、あと何分で帰らなきゃいけないだとか、お知らせが書いてある不思議な板の裏側の色が変わり、その日、どのお風呂に入ればいいかがわかります。
 お風呂の効果は日替わりで変わるのですが、その日に来る人の状態をお風呂側が感じ取って効果を変えているのかな!? と私は想像しています。

 銀山先生特製の手ぬぐいですが、実はその手ぬぐいをお湯につけると効果が見られるなど、かねやま本館の不思議でおかしなところはほさにもたくさんあって、例えば、かねやま本館の女将の小夜子さんの手作り料理もそうです。いつもお風呂から出ると、お茶と一緒に振る舞ってくれるのですが、それがものすごく美味しそうで、食べる前に制限時間が終わってしまったときは、もっと早くお風呂から上がれば食べられたのにー!と思ってしまいました。

 その後、サーマは温泉の効果により、だんだん明るくなっていき、かねやま本館に行く回数も減っていくのですが、いやいや、悩みがなくてもそんな不思議なところ、毎日通えばいいのにと思ったり、昔の自分と重ね合わせて読みました。

「こんないいところから離れたくない、でも…」みたいな気持ちですね。でも、最後の日はお風呂の効果により、まっすぐな気持ちで最終日を迎えられたのがとてもよかったです。という反面、私的には
「おいおい、こちとら本の世界から抜け出すのが大変すぎてやばかったんだぞ! 私もお風呂に入らせろ〜!」
という気持ちになりました。
 こういう気持ちの時には、本当に本の中に入りたくなります。でも、入ってこの中学校に行けたとしても中学生専門だし、悩みもそこまで大きくないから、おそらく銀山先生に追い出されると思いますが……。

冬休みの体力作りの宿題に毎日「ハレ晴レユカイ」を踊るガーナでした。

2021/01/06