かん子の連載

【赤木かん子還暦おめでとう企画】 42 アクティブラーニング

アクティブラーニング   by 福岡の山口

かん子さんは、最近は学校図書館の司書向けに
「アクティブラーニング」の話をすることが多いです。

私は、かん子さんの話をずいぶん長いあいだ聞き続けているので、ここ最近の学校図書館にまつわるアクティブラーニングの話も、けっこう自分ではわかったつもりになっていました。
しかしこの前、えっ?
と思ったことがあったのです。

かん子さんの調べ学習の基礎の本が出版されたのは、もう10年以上前です。
その頃から、調べる時の一番最初は
“百科事典!”
といわれていました。

普通は“百科事典”はわからないことを調べるために使うもの、つまり、答えを探すもの、だと思われている、と思いますが、本当はなにかを調べるときに、一番先に“定義を押さえるために”使うものなのだ、ということを教わりました。

まず、調べたいテーマのキーワードを百科事典で引き、それを書き写し、そのなかに出てきたわからないキーワードがあればそれも引き、関係するキーワードすべてをそうやって百科事典で引いてから、調べ学習をスタートさせる……つまり、百科事典は下調べをするために使うのだ、というのです。

なるほど、と納得し、本を買い、読み、講座を受け、授業のなかでも子どもたちにそう話すようになりました。
調べ学習はね~、一番最初に百科事典を引くんだよ、とーー。

でも、子どもたちはすぐに納得して使い始めるのに、先生がたには説明しても説明しても、子どもたちへの授業をみてもらっても、ふーん、という感じで、あまり、わかった!という感じになってもらえなかった……、百科事典、凄いね!になってもらえない……のが悩みのたねでした。

自分では百科事典の授業を始め、先生がたにこのさきどうすればわかってもらえるのだろうか……と思っていたときに『先生のための百科事典ノート』が出版されました。(2012)
やった!
これを読んでもらえば、先生がたにもすいすい伝わる……と思いましたが、やはり、そうそう、うまくはいきませんでした。

『先生のために』と銘打ってあっても、なかなか先生がたがその本を買うまでには至らない、また、実際の百科事典の授業を見たことがないとイメージがわかない、調べ学習自体を自分がやったことがない、など原因は様々でしょうが、私はこんなに百科事典のことを大切に思って伝えているのに、何故、先生がたには伝わらないんだろう?
といつも思っていたのです。

だから私は、自分自身はもう充分わかっている、つもり……でした。

ところが、高知だったか長崎だったかで高学年用のアクティブラーニングの講座で百科事典を実際に繰り返し引いていたとき、本を読んで解っていた感覚や、講座を聴いて解っていた感覚とは全く違うなにかが、突然
「わかった!」
のです。

そのときは、京都へ修学旅行に行く、がテーマだったのですが、最初に
『京都』
を引き、次に
『伝統工芸』
を引き、次に
『西陣織』
を引いたあたりで、突然、カチッとなにかのスイッチが入った感覚があったのです。

それは京都府とは何で、伝統工芸とは何で、という基礎をふまえての、西陣織とはなにか、がわかった瞬間……。
『西陣織』だけしか引いていなかったら決してわからなかったことがわかった瞬間、でした。

基礎の知識があるから、その上にあるものを捉えられるのです!
そして、その基礎の上にある他のものも、見ることができるのです!!
もっと知りたいと思う気持ちも持てるのです!!!

他の人が調べた、他の事柄についても話を聞きたいと思い、自分の調べたことも話したい、と思えるようになるのです!!!!

それがアクティブラーニングなんだ!!!!!
と思いました。

それまで、アクティブラーニングという言葉は知っていても、文科省の通達を見てそこに書いてあることは理解しても、ふわふわした雲のなかにいるような感じで、わかったようで結局はわからない気がしていました。

雲が晴れた気がしました。

そしてもうひとつ……。
教える、身につけるの「わかる」ということはこういうことなんだ、ということがわかったのです。
そうして、いい大人の私でさえ、実際にやってみなければわからなかったことを、私は子どもたちに言葉で伝えただけだった……。
どんなに熱心に伝えても、一緒にやってみる時間がなければ、向こうのスイッチが入る瞬間を作り出すことはできないのだと悟りました。

百科事典については、最初の段階では、謎を与えて、百科事典を引く(時間内にたくさん引く)という実習ができますが(そのための小冊子……「百科事典の引きかたを教えよう」ができています)実際調べる時には、ついその手を離して、離したままにしてしまっていたことに、ようやく気がついたのです。
次の項目、その次の項目まで追えているか、という部分をもう少し、しっかり見ていかなければならないのだ、ということを痛感しました。
そこまでやったら、きっと、子どもたちにも、先生がたにも伝わるのかもしれない……。

そのあいだじゅう、この10年間、かん子さんは淡々と、地味に、辛抱強く、諦めずに、百科事典の話をし続けていました。
私ですらこんなにイライラするのに、腹も立てずに……。

なんべん言ってもわからない受講者代表として、ここで言わせてください。

苦労かけてすみません。