かん子の連載

【赤木かん子還暦おめでとう企画】 76 「私とかん子さん」

「私とかん子さん」   by 玉井喜久子

初めて、生(なま)かん子さんに会ったのは、今から14年前、学校図書館の仕事を始めたばかりの頃。
夫に運転を頼み、車で1時間くらいのところへ講演を聞きに行った。
会場 で目にした赤い髪の女性。
いくらなんでも、赤木かん子さんだから髪が赤いとかないよね、まさかね~と思ったら、そのまさかだった。かなりの衝撃だった。

しかし、衝撃だったのは外見より、講演の内容。
「子どもたちは40歳のおばさんの選んだ本なんか読みたくないんだよ」
と言われたのだ。
今なら、それが子どもをよく知って、本を選ぶことだと理解できるけど、駆け出しの頃だったので、言葉をまんまに受け止め、じゃあどうしたらいいの?と途方にくれたのを覚えている。

以来14年間、独りよがりにならぬよう、子どもの声に耳を傾けて、ありとあらゆる情報をキャッチして選書には一番気を遣ってきた。予算もあることなので100%満足とはいかないけれど、子どものちょっと先を読めるとちょっとうれしかったりする。

選書のことでもう一つ。
かん子さんに言われて心しているのは、子どもたちのうち1人でも
「この図書館には自分の読む本がない」
と思わせてはダメだということ。
これについては、いつまで経っても、どこまでやってもこれでいいというところまでは行けなくて、日々研鑽中というところ。

かん子さんのお話をただ聞くだけだった頃は、なんて厳しいんだと思っていた。自分が仕事を始めてみると、子どもたちに対するやさしい眼差しを見るたび、私たちがしっかり勉強しないと子どもたちが不幸になるから、厳しく言ってくれるんだろうなぁ、と理解した。
今はかん子さんの声は耳にやさしく響く。
日本中旅して、しんどいめにもいっぱいあって、それでも子どもたちの幸せのためにと読書環境を整えてくれているか ん子さん。
どうか、身体に気をつけて、これからも私たちの前を闊歩し続けてください。

私は、これからも目の前の子どもたちをもっと幸せにするために、かん子さんから教わったことをフルに活用して、子どもたちのための図書館を作ってこうと思う。
そのために、いつも笑顔で、かん子さんに教わった
「心は少し腹黒く」
をモットーにこの仕事を続けていきたい。
これからもよろしくお願いします。