かん子の連載

水曜日の歌 ♬~ 第四十七回

てふてふが一匹 韃靼海峡を渡って行った (安西冬衛)

一行詩で一番有名な詩でしょう。
おまけにこれは音読でなく、眼で楽しむ詩です。
てふてふ、という文字が、本当に蝶々がひらひら音もなく羽を動かしている感じがするのと、その柔らかい蝶と、だったんかいきょう、という硬い音の響きの対照が素晴らしい。
ちなみにだっんかいきょう、はサハリンにある、間宮海峡のことだそうですが(中国名が
韃靼海峡

なのです(各国めいめい、勝手な名前で呼んでいる)。
でも、安西さんが、見たことあるかと言えばないでしょう、たぶん。
ですからこれは、架空の海峡だと思ってもいいでしょう。
どこかよくわからないが、広い広い海の上を(といっても海峡なので陸地は見えるところね)一匹の蝶が一生懸命飛んでいった……。
そうしてこの詩は有名ですが、作者が
安西冬衛

だという名前だということはあまり有名ではない気がします。
当時を代表する詩人の一人なので覚えてください。

2018/05/16