かん子の連載

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(毎月一回の予定です)

ガーナのおすすめ本商会(12)
「魔女たちは眠りを守る」
著者・村山早紀
KADOKAWA

 今回紹介する本は「魔女たちは眠りを守る」という本です。著者は村山早紀さん。この本を手に取ってみようと思った理由はいくつかあります。

 1つ目は、よく行く大好きな本屋さんがあるのですが、そこに置いてあった、のです。最初は気にならなかったのですが、オススメコーナーにあったので読んでみようかなと思いました。この本屋さんは、決して大きくなく、おじいさんがいつもレジにいて、ちょっと入りにくい感じではあるのですが、新刊コーナーのセレクトがお父さんや私の好みの本が多く、いつからか通うようになりました。いまではおじいさん店主と本の話をするようになったくらいです。

 2つ目の理由は、昔から魔女関連のものが大好きなので「魔女たちは眠りを守る」という題名はやはり放っておけないなと思いました。あと、表紙が絵画のようにきれいでミステリアスな絵に惹かれました。持っていてうれしくなる表紙です。

 3つ目は、帯に書いてあった言葉やあらすじに、ビビっときたからです。とても素敵で、読んでみたいと思いました。帯の言葉はみなさん自身で読んでみてください。詩のような表現で、感想を言葉にするのは難しいですが、とにかくエモいです。

 

 海辺の街の「魔女の家」を舞台にした短編集です。

 この「魔女の家」は、魔女たちの寄宿屋のような場所で、旅をしている魔女たちが立ち寄り寝泊りするところです。その海辺の街を舞台に、魔女と関係する不思議な話がたくさん入っているのです。

 短編はそれぞれ、魔女の目線、海辺の街を目指す人形の目線、街に住んでいる人間の目線など、いろんな立場の目線から、書かれています。

 この本に出てくる魔女は、いわゆる魔法を使って何か大きなことをするとか、魔女っぽいことはあまりしません。この世界に生きる魔女は自分たちが生き絶えないように人間にバレすぎないように、旅をしながら静かに暮らしています。そんな魔女がいる世界では、魔女にしか見えないもの、わからないこと、魔女にしか感じることができない死人の感情などがあり、時に無力さに切なくなったり、落ち込んだりすることもあります。人間と、とてもよく似ている魔女たちの話ともいえます。

 お気に入りの短編の一つは「サンライズ・サンセット」というお盆のことが書かれている話です。

「魔女の家」を経営している魔女ニコラはお盆になると街に出て、お盆で戻ってきている死者たちに出会います。いろいろな家庭に行き、死んだ人たちと会話をしたり、死んではじめてお盆を迎えた少年とのやり取りがあったりします。死んだことに気づいていない少年の話には考えさせられました。若くて死んでしまうということは、果たせない約束が多くなって、本人だけじゃなく、まわりのみんなにとっても中途半端なままになってしまうのです。

 この本は短編ですが、全体を通して主人公の魔女の「七瀬」という少女の存在が鍵になります。最初から最後まで読んだ人にしか分からないようなところに、この七瀬の秘密が記されていたりして、すごくよく考えられている作品だなと感心してしまいました。

 この、赤いロングヘアでくせ毛、そばかすのある少女は、魅力的で、でも不思議な雰囲気で満ちています。とてもキャラ立ちしていて、ラストにちょっとした謎めいた一文もあるので、ぜひ続編を読みたいです。

 全体を通して春夏秋冬、1月から12月までの短編集です。寒かったり、雨だったり、暑かったり、花がきれいだったり…。温度や匂いを感じる物語の雰囲気を楽しむには、静かな雨の日に読むと、とても入りこめて鼻がツンとする読書になるはずです。詩的な気分になって泣きそうになるという意味です。

なのでこの本は、梅雨におすすめします!

 

休校が終わり、6月からの学校が楽しみではあるけれど、休校中の宿題が多すぎて全然暇じゃないガーナでした(涙)。

2020/05/28