かん子の連載

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ガーナのおすすめ本商会(17)

「夜ふけに読みたい 神秘なアイルランドのおとぎ話」
監修・長島真以於
訳・加藤洋子/吉澤康子/和爾桃子
挿絵・アーサー・ラッカム

平凡社

 今回紹介する本は「夜ふけに読みたい神秘なアイルランドのおとぎ話」です。前回の最後の一言とつながっています。アイルランドには、お父さんの友達が住んでいて、前から興味はあったのですが、この本を読んで「これこそ私が心に憧れ、思い描いてる国そのものだ!」と確信しました。昔から聖書や神話、おとぎ話系は大好きでしたが、古代ケルトは他のものとは違う良さがあって、個人的に惹きつけられる世界です。この本の第一印象はなんといっても「夜ふけに読みたい」というタイトルの中の言葉。見た瞬間に「買いたい!」と即決でした。

 このお話は、“アイド修道士”という人と、猫の“パングル”がナビゲーターになって紹介してくれる、ケルトのお話がたくさん入っている短編集です。読み聞かせをすすめているようで、目次には読み聞かせの難易度が星マークや三日月マークで記されています。

 第1部は、この世界の英雄とされている人物「フィン・マク・クゥイルの物語」が3つ、第2部にはちょっとしたとんち話のような「パングルのおはなしぶくろ」があり、最後の第3部は「フィン・マク・クゥイルの冒険」の話が3つ入っています。他にもパングルや、アイド修道士が教えてくれる「アイルランドおとぎ話豆知識」みたいなコーナーもあります。

 この物語でわかる古代ケルトの特徴は、神様が決まっていないことです。ギリシャ神話などは、神様がメインで月の女神、太陽神などがいますが、古代ケルトは自然と人、妖精などがメインで特定の神様は出てきません。たとえば、英雄が悪い妖精の国の姫に捕まってそこから逃げ出す……そんな話が多いです。ちなみに私が好きな話は、英雄フィンがどうやって生まれたかの誕生秘話と、角が生えた魔女の話の2つです。古代ケルトの話は思わず「へ?」となるような、こんがらがる話が多いです。試しに英雄フィンの物語の一文を書いてみました。

「ベゴラがどこから来たのかは、わかりません。どこへいったかも、はっきりしません。本当の名前もわかりません。ベゴラというのは「持参金がない」とか「持参金が少ない」というあだ名です。ひとつだけはっきりしているのは、わたしたちの知っている世界から姿を消して、あそこにいるんじゃないかと見当をつけることさえできない世界へ行ってしまったということです。それは有名なアイド・スラーネの子ディアルミドが、アイルランド全土を治めていたころの話です。」

 こんな感じがえんえんと続くのです。文の読解が面倒くさくなり、眠くなる人も多いはずです。でも、読書の仕方の一つとして、そこがいいとも言えるのです。「眠くなる」というのは決して悪いことではないと思うからです。つまらなすぎてというのはダメですが、話の展開の王道さに安心してリラックスするという気持ちもあるのではと思います。読解して話に入りこむだけが読書じゃないという意味です。

 もう一つ思ったこと、それは展開が「グロいな…」ということです。神話はそもそもエゲツなかったり、ドロドロしていたりと、ショッキングな話が多いですが、ケルトの話はそこに「グロさ」も足されています。このびっくりする展開を誰かに話したい!と思っても、ストーリーが伝わりにくいので共感しにくいという難点もあります。例えば、隣の家の奥さんに「自分の家の牛の乳が出なくなる」魔術をかけられたことの仕打ちに、魔術師に力を借り、隣の家の奥さんの心臓に穴を開ける魔術をかけると隣の家の奥さんが「ゆるして!」と謝りに来たりとか、正直、小さい子への読み聞かせには、向いてないんじゃないかと思ってしまいます。でも、こういう話ほど、なぜか何度も読みたくなります。

 本当にいい本なの?と、不思議に思った人もいると思いますが、こういう本こそ何度も読みたくなり、ずっと持っていたくなる本なのです。夜ふけに読んでみてください。ちなみに私は、夜中の12時に読んでいたところ気づいたら寝ていました。

友達とのクリパの準備を始めるガーナでした

2020/12/09