かん子の連載

☆楽しい学校図書館のすぐに役立つ小話☆彡【文学について・その2】

紫式部の「源氏物語」は世界で最古にして最長の小説です。
最高の、といえるかどうかはわかりませんが、10本の指には入るでしょう。
かつ、源氏はいまだに現役です。
一つの小説がどれだけ命を保つかは、その小説が提示した命題が解決できたかどうかによります。
誰かが解決策を思い付けばいまはそれは文字によって普及していき、みんなが解決したね!と納得すればそのテーマは書かれなくなります。
人間はどうしても自分に一番興味がある……。
ですから自分がいま悩んでいることに一緒に悩んでくれるもの、答えを出してくれるものを面白いと思い、興奮します。
自分の悩みではない話は、自分には関係ないや、になり共感しません。
ですから、いま志賀直哉の「暗夜行路」はウケない。
真面目に努力すれば幸福になれる……うーん、そうとも言い切れないよ、ということをもう私たちは知ってしまったからです。
ところが“源氏”は千年前の物語ですが、いまだに現役です。
“源氏”が提示したテーマは
《女は男の愛がなくても幸福になれるのか?》
だからです。
そうしてそれに対して私達はまだ答えを出せていません。
“源氏”の答えは“尼寺へいけ”であって、それは解決したことにならないからです。そうして紫の上は結局、出家することはできませんでした。
彼女は諦めて亡くなります。
“宇治十帖”の浮舟も、結局は口説いてくる二人ともを振って関わり合いにならないことを選択します。
でもそれが答えになるのか?
解決したのか?
といえば逃げただけで解決はしていない、ということになるでしょう。
「ドラゴンボール」の第三部で、ブルマが解決に近い……ことをしているのですが、それは理解されず広まりません。
ブルマは自分の苦痛でいっぱいで逃げ出した夫、ベジータに依存していません。
会いに行って
「なんであんな奴と結婚したんだ?!」
と喚く息子に
「あれでもいいとこあんのよ」
の一言で片づけ、動じないのです。
でもそれは共感されない。
大多数の女性は、それを“解決した”と受け取らない。
なので“源氏”はいまだに現役で、現代語に翻訳しさえすれば、きのう書いたみたいに読めるのです。

でも、ホントに不思議だわ。
千年も前なのに!
大君(おおいぎみ)はどうみたって拒食症で死んでるのよ!?
なんでそんなこと知ってたんだろう?
紫式部……。

2023/03/09 更新