かん子の連載

☆楽しい学校図書館のすぐに役立つ小話☆彡【SFの時代・その7】

ちなみにディックの代表作の1つである「トータルリコール」をパクリ……もとい、オマージュして作られたのが日本のコミック(とアニメ)の「コブラ」です。
片腕が銃になってる宇宙海賊で、悪の組織、ギルドと戦う話ね。
話のスタートのセッティングはもうそのまんま、主人公の顔も、ハン・ソロです。
このコミックは、アメコミそっくりのペンタッチなのですが、アメコミ、と見せかけてその実ものすごくアメコミを裏切っている、という驚くべき作品です。
男はみんな筋骨隆々、女はみんな美人でプロポーション抜群、露出の多い戦闘服に身を包み、そうして作者はとんでもなく絵がうまいのでメカをはじめ、実にカッコいい。
で、それに惑わされると気がつかないかもしれないのですが、ここには男と同じ位の数、女性の悪党もでてくるのです。女も助けられるだけの脇役ではなく主役をはる。
出世したい、大金つかみたい、そのためには人殺しも辞さず、本当に男と対等に悪をなす女性がゴロゴロ出てくるのですが、そうするとコブラは女性だ、ということに頓着なく、容赦なく彼女たちを殺していくのです。
すっごい、男女平等……。
このことに触れている文章は見たことないのですが、初めて読んだとき、私はぶっ飛びましたよ。
そうしてコブラの相棒は、すこぶる優秀なアンドロイドのアーマロイド・レディ……。
昔は生身の本物の女性、かつコブラの恋人、だったのにある星に行った時に機械化されてアンドロイドのボディになってしまった、そうしてもとに戻るチャンスもあったのに、女としてコブラのそばにいる幸福よりも、コブラと一緒に宇宙(あま)駆ける人生のほうがいい、ときっぱり人間に戻ることを断った、超強気な頭の切れるカッコいい女性です。
ペリー・メイスンとデラ・ストリート(古いか)みたいにね。
 
もうひとつ、コブラは途中でパソコンで描くことに移行しました。
そんなことほとんど誰もやってなかったときで、噂ではそのときは6000万かかったそうです。
私は手描きのほうが絵はいいな、と思いましたが、これからはそういう時代が来るんだな、とは思いました。
かつ、途中からコブラは劇場上映もしなくなりました。
DVD配信のみで、ビデオレンタルするしか、新作が見られなくなった……というのが結果としてよかったか悪かったかわかりませんが、やはり人の口にはのぼらなくなったので……。
そういうわけで、コブラ、という作品は、というより著者は、かな、とても先鋭的な斬新な仕事をしていたわけです。
一見、一番古そうなアメコミのように見えるのに。

いまはテレビでもやらないし、コブラ、知ってる人も減ってるよなぁ、と思いますが、私はとても好きな作品です。

2024/02/08 更新