かん子の連載

☆楽しい学校図書館のすぐに役立つ小話☆彡【司書は椅子に座ってピッとやるだけの人じゃありません。学校司書は忙しいんです。・4-5】

学校司書の桜李桃梨(おうりとうり)さんからの寄稿をご紹介していきます。
小話とは言えない??、学校司書さんの忙しい日々をぜひご覧くださいませ~

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 

4-5 子どもたちへの対応
 
実際に司書になって、学校に入ってみたら、ビックリすることがたくさん、本当にたくさんありました。
やっぱりやらないとわかんないことって、ありますね~。
 
なかでも1番最初に赴任した学校での最初の事件は忘れられない思い出です。
授業中なのに、何人もの子どもたちが、廊下を走ってるんです。
どうしたの?
と聞いても笑いながら走ってくだけで
???
それから毎日毎日、廊下を走っている子どもたちにであいました。
ある時、たまたまどのクラスも使ってなくて、図書館が空っぽのときにその子どもたちが走り込んできて、かくれんぼを始めました。
ええええ?!
学校ってこれが普通なの!?
新米司書だった私は副校長先生に、その報告はしても、具体的に相談はしなかった気がします。
まだ学校に慣れていなかったからですが、そのうちだんだんやっぱりこれはおかしい、と思い始めて、話しやすい先生に相談しても
「怒ってもらっていいから」
と言われるだけで……。
えっ?
そういうものなの?
それでいいの?
というか、それで解決するの?
 
で、そのあと走ってる子どもたちに少し強めに初めて「走っちゃダメよ~!」
と言ったのですが……。
声をかけられて、走っている子どもたちは突然動きを止めて私の方を向いたのですが、そのあとはそのまま……。
走り抜けていきました。
えええっ?!
聞いてくれない~。
そのあと何度注意しても、全然聞いてもらえず……。
怒るこちらが息切れするだけで、何の役にも立ちませんでした。
その時わかったのは、怒るって、エネルギーがいるんだな、ってことでした。
だって、家のなかでもそんな本気で怒らなきゃならないことなんてなかったですから、そもそも怒ることに慣れていなかったんです。
大きな声を出すって、疲れる……。
それに、注意して子どもたちを見るようになると、あちこちでいろんな先生に怒られてるのに気がつきました。
でも、なんとも感じてない感じ……。
少しずつ仲良くなった先生がたと話すうち、いろんな状況がわかってきました。
彼らは怒られ慣れていること(家でも学校でも)クラスに入れなくて、授業中廊下を走っていること。
そうなんだ~。
もともと「怒る」ことに抵抗があった私は、それ以降「怒る」ことをやめて、できるだけ普通に話しかけるようにしました。
そうすると、子どもたちの空気が変わりました。
図書館に走り込んできた子たちも、そこで一息つく感じで
「今、うちのクラス、算数やってる~」
とか、1人ずつ事情が違って、走ってることも教えてくれるようになりました。
学校側も本腰を入れてこの問題と向き合うことになり
「走ったらケガするよ~」「走るスピードをゆるめて~」
「廊下を曲がるときは歩いて~。ぶつかるよ~。」
とか、怒るのではなく、声かけの方向を今までとは変えていきました。
何人もいても、一人ずつ事情は違う……。
ひとりずつクラスに入れるよう、先生たちみんなで討議し、対応を変えました。
先生のなかには
「ガツンと言わないとダメなんだ!」
とおっしゃるかたもいらっしゃいましたが、それで問題が解決したかというと、全然解決しなかったわけですから、それではなんにもなりません。
先生がたの対応が変わってきたら、走っていた子どもたちも1人ずつ落ち着きを取り戻し、学期終わりには走る子は全員いなくなりました。
ほっ。
怒るって、エネルギーを無駄に消耗するだけでなく、なんというか、負の世界を生む気がします。
怒るほうも嫌な気分にならざるを得ないし、怒られた子たちも
「怒られた!!」ことしか印象に残らず、なんで怒られたのかは伝わらず……。
図書館は子どもたちの味方であって欲しい、と思っていた私はそれ以降怒ることをやめました。
だって、怒る人がいる場所に子ども達は来ません。
そんなところ、居心地悪いですから。
命やケガに関わることでは怒ることもありますが。
でもそうやっていると、子どもたちから
「先生って、怒らないよね~」
と言われるようになりました。
みんなよくわかってるんです。誰が怒って、誰が怒らないか……。
こちらは気がつかなくても、いつも観察されてるんです。
図書館で
「○○先生はすぐ怒るから嫌なんだよね~」
って話になり、子どもたちに寄り添うためにはやっぱり怒らないって大事だと痛感しました。
図書館がみんなの居場所になるために。
 
 2025/08/21 更新